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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)390号 決定

静岡銀行

理由

債権者株式会社静岡銀行は、債務者(抗告人)株式会社名塚商店に対する抵当権の実行として抗告人所有の不動産に対し競売を申し立て、これに基き原審東京地裁は昭和三十二年五月二十八日競落許可決定を言い渡したが、右債権者静岡銀行に対する抗告人の債務確定額については、静岡銀行側では金四十六万四千円と称し、抗告人としては金三十四万五千円と主張するので、その差額十一万九千円が未だ不明確のままである。これは金利繰入元金の処置が明らかでなかつたためで、抗告人としては昭和二十八年の債務確定時、金利は全額静岡銀行で負担するとの確約を当時の野田次長と交していたにも拘らず、本店管理課においては弁済金を金利に繰り入れ、右の差額金を生ぜしめたものであり、右債務確定については、現在静岡銀行との間で抗争中であるから、その解決をみない間に競売手続が進行し、本件競落許可決定がなされたのは違法である。

記録によれば、本件は抵当権者たる株式会社静岡銀行が債務者たる抗告人株式会社名塚商店に対する債権担保のために抗告人所有の不動産につき設定された抵当権の実行として競売申立に及んだものであることが明らかである、従つて苟しくも債権が残存する以上は、抵当権者は抵当不動産に対しその権利を行使することができるから、論旨は本件競売を不当ならしめる理由となり得ない。その他原決定には取消の事由となるべき違法不当の点は認められないとして本件抗告を棄却した。

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